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パパは詩織ちゃんには

今日で僕と
お別れなのを
言わなかった…
帰ったら
僕はもういない…
ただ…彼女も
いつもと違う感じに
気付いていたのか
幼稚園に
行くことを
めずらしく拒んだ…
少しキツめに
パパに叱られて
泣きながら
朝食を済ませた…
バスが
お迎えにくる所まで
パパと僕で
見送った…
詩織ちゃんは
むくれたまま
下を向いていた…
バスに乗り込む
後ろ姿に
思わず
僕は叫んだ…はじめて叫んだ…
詩織ちゃんが
バスの窓から
泣きながら手を振った…
僕はバスに
走り寄ろうと踏み出した
パパは僕のリードを
凄く短く持ち直し
しゃがみ込み
僕の胸を腕で抱えた…
僕の耳元で押し殺した声で
「頼むょ、ハート
今詩織には
気づかれたくないんだ…」
バスが角を曲がり
見えなくなるまで
見送った…
振り返ると
家の前にワゴン車が
停まっていた
ハウスクリーニングの
人が四人降りてきた…
パパと話し
家の中に
入っていった…
そのまま僕は
パパの車に
乗った…
この時…
僕はまだ
パパの嘘に
気づかず、
新しい飼い主の
所に行くのだと
信じていた…
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