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パパの車で

随分走ったと思う
僕はいつものように
後ろの席の毛布の上に
腹ばいになり、
手を乗せる所に
アゴを乗せていた…
車が路肩に停まった
「ハート…
この辺でサヨナラだ…」
パパは車から
僕を降ろし
大好きな
ササミのおやつを
ちぎっては
僕にくれた…
「最後の最後まで悩んだけど、
やっぱり保健所には
連れていけない…」
「今度は途切れない幸せを
掴んでくれな…」
「生きていてくれ…」
「ダメな飼い主だった…
      無責任な事を言うなって
顔して…
そうだよな…ハートがウチに来て
一年も経たないんだよな…
でも、詩織がしっかりしたのは
間違いなくハートのおかげだし
楽しかったな…
ちゃんと俺が飼い主を見つけて
たまに顔を見に行けたら
どんなに良かったか…
すまない…」
大きいままのオヤツを
まとめて置いて
僕が夢中で
食べている間に
車に戻り
発車した…
車に乗り込む後ろ姿に
気づき
動き出した車を
追いかけた…
小さくなっても
追いかけて走った…
僕には
何が何だかわからなかった…
新しいお家なんて
決まってなかったことに
気付いたのは
車が見えなくなり、
追いかけられなくなって
しばらくしてからだった…
         …どうしたらいいのだろう…
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