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その日の僕は

未だかつてない位
大きな声で
叫んだ
僕の声は
きっと彼女に届くはずだから…
だってあの時も
僕の声に
気付いて助けてくれたんだから…
あの日は
凄い雨で
雷までなっていて…
ママから無理やり離されて
置き去りにされ
暗いし怖いし
冷たいし
ママ、ママ~
どこ❓
僕、寒いょ、怖いょ
どこをどう歩いたか
わからないけれど
白いベンチの下に
身を隠し
泣き叫んでた
どのくらい泣いていたのだろう…
自分の声と雨の音でかき消され、
気付く事が出来なかったけど
玄関の電気がつき
女の子の声が聞こえた
「絶対聞こえたんだから
絶対居るって」
ピンクの傘をさした
小さな女の子…
彼女の家の庭に迷い込んで
いたらしい
僕はとっさに
身を隠した
懐中電灯を持った
男性も一緒だった
ベンチから
僕のシッポは
はみ出していたから
あっと言う間に
僕は見つかった
光に照らされ
彼の大きな手で
抱えあげられた…
「ホラいたでしょ❓
ビシャビシャで可哀想~」
彼女はずぶ濡れの僕を
抱きしめながら
男性に向かって
こう言った…
「ネェお家に入れてあげても
いいでしょう❓」
「きっと寒かったし
おなかも空いてるかも
知れない」
「ネェパパ、お願いあせる
ちょっと抱きしめがキツかったけど、
冷え切った僕の身体には
とても暖かく感じた。
男性は黙ってうなづいて
「ほら、詩織も汚れちゃったね。
早くお家に入れてあげなさい」
こうして僕は
彼女の家族になったんだ…
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